刊行物

小児腫瘍組織分類図譜1

当研究会と関連が深い日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会では、1975年から小児腫瘍の病理に関する図譜(アトラス)を金原出版より発刊してきました。個々の図譜(アトラス)発刊にあたり、主担当委員名、あるいは小委員会などが設けられた場合はその委員名を記載しています(敬称略)。
第1篇 小児肝癌・腎芽腫・神経芽腫群腫瘍(1975年発刊)
 主担当委員 小川勝士
第2篇 軟部組織腫瘍(1976年発刊)
 主担当委員 遠城寺宗知、佐野量造
第2篇 軟部組織腫瘍<改訂第2版>(1984年発刊)
 主担当委員 遠城寺宗知
第3篇 奇形腫群腫瘍(1978年発刊)
 主担当委員 牛島 宥

第1篇序文より
 日本には正統派の病理学が先輩によって深い根を降ろし、優れた研究者が育ったのであるが、戦後外科病理学の面にも著しい発達が見られるようになった。しかし、新生児、小児における病理学への関心は、何故か久しく盛上りを示すことなく過ぎて来たのを遺憾に思っていたところであった。幸いにして最近この方面の研究者も増加し、小児を扱う臨床科学者と協力して、諸種の難問題の解決が計られるようになったのは大きな慶びである。

 先年、日本小児外科学会、日本小児科学会からの協同の要請があって、日本病理学会の中に小児腫瘍組織分類委員会が設置され、はからずも数年間不肖私がその委員長の席を穢すことになった。全国から選出された専門家が検討を繰返し、臨床面からの厳しい批判を容れて、肝芽腫、腎芽腫、神経芽腫にはじまる一連の代表的小児腫瘍の病理組織学的基本分類試案が作成され、最終的には学会の場での検討の後に最終案が決定された。一方では特定臓器腫瘍の基礎学的知見も充分に考慮し、他方実際的な利用面をも重視することは可成り困難な作業であり、これらの案を全国内基準として流布するには、ある程度の妥協も必要であったことは認めざるを得ない。
 しかし、これらの分類は現段階の最新の知見をも織込み、国際的見地からしても、充分批判に堪えるものと考えている。作業にあたられた委員のみならず、材料を提供し、常に検討に参加された臨床部門の各位の協同の努力の結晶が、第一篇として刊行されるに至ったことは、この継続的な委員会の当初に参画したものとして、慶びであり、小川教授を中心とする委員の各位に対して感謝に堪えない。
 委員会の努力はさらに、必要な他の臓器腫瘍にも及んで居るので、近く第二編以降の刊行が続くものと思われる。幸いにしてこれらが、研究者及び臨床医家の座右を飾り、小児腫瘍克服のために役立つことになることを望み、且つ確信するものである。また病理形態学者が小児医療のチームの一員として協同参加しつつあることを示す一里塚となるならば、委員各位の努力も酬われるというべきであろう。
日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会 前委員長 太田邦夫

第1篇 小児肝癌・腎芽腫・神経芽腫群腫瘍(1975年発刊)

第2篇 軟部組織腫瘍(1976年発刊)

第2篇 軟部組織腫瘍<改訂第2版>(1984年発刊)

第3篇 奇形腫群腫瘍(1978年発刊)

小児腫瘍組織分類図譜2

1988年の小児泌尿器腫瘍からは、新訂版として発刊されています。
第4篇 小児白血病(1981年発刊)
 主担当委員 島峰徹郎、浦野順文
 小委員会 
 病理:島峰徹郎、渡辺陽之輔、浦野順文、菊池昌弘
 小児科:赤羽太郎、小出 亮、伊勢 泰、近江恵子、藤本孟男
第5篇 中枢神経系腫瘍(1983年発刊)
 主担当委員 遠城寺宗知
 特別委員 生田房弘、石田陽一、北村勝俊
新訂版第1篇 小児泌尿器腫瘍(1988年発刊)
 小委員会 浦野順文、佐々木佳郎、小林庸次、伊東宏、臺丸祐
  協力者 田中文彦、小田秀明、横森欣司
新訂版第2篇 小児悪性リンパ腫および類縁疾患(1990年発刊)
 主担当委員 若狭治毅

新訂版第1篇序文より
 戦後に広く普及した外科病理学が着実に根をおろし、腫瘍の診断に際しては、予後との関連などの点からその組織型が重要となった。腫瘍の組織型分類は広く日本で用いられる必要があり、国際的にも通用するものが望ましい。国際的には成人を含めたWHOの腫瘍の組織型分類があるが、小児腫瘍に関しては実際に役立つものは少ない。
 本邦では小児腫瘍の登録、予後の追跡などの観点から、小児腫瘍研究者のあいだで日本全国共通の組織分類が必要であるとの意見が出てきた。このような機運の中で、日本小児外科学会および日本小児科学会の共同の要請から、当時病理学会の総務幹事をしておられた太田邦夫先生が日本病理学会の中に小児腫瘍組織分類委員会を設置して、自ら委員長となられて、この問題に取り組まれた。初めに、小児肝癌、腎芽腫、神経芽腫群腫瘍の3腫瘍について組織分類を行い、小児腫瘍組織分類図譜の第1篇として出版したのが昭和50年10月のことであった。その4年後には小改訂を行って、第2版を刊行した。この組織分類は広く実地に活用され、小児腫瘍の研究家にとってもなくてはならないものになった。この10年間に、日本全国にわたり小児病院が造られ、小児外科、小児内科、小児病理の研究者の共同研究も軌道に乗ってきた。小児病理の専門病理学者も徐々に増え、本邦でも小児病理が根をおろしてきた。
 このような時代的背景の中で、小児腫瘍の知見も急速に増加し、小改訂では済まなくなり、大改訂が必要となった。この機会に、今までの図譜の第1篇の腎芽腫の部を、広く腎・尿路系腫瘍を取り扱った小児泌尿器腫瘍とした。これを新しいシリーズの図譜の第1篇として、発刊することにした。今回の図譜は小児病院の第一線で活躍する小児病理学者が主体となって作成された。
 腎芽腫組織分類の初版の発刊に際して、「組織水準での未熟性、異型性と予後の対比は、現知見では必ずしも明らかでない。本委員会の組織学的分類が、この関係を明らかにしうるか否かは将来にかかっている」と太田先生は述べられたが、この10有余年の間にその点も次第に明らかになってきた。当初、腎芽腫の組織分類にあたって、腎の個体発生がその組織発生を説明するよりどころとして最も妥当と考えた。現在の分類は、実際的な利用面がとかく重視されがちで、その組織発生については必ずしも厳密ではない。太田委員会の原案は、10有余年経った今でも病理学者としてやはり正しかったのだと考え、今回の分類でも従来の分類方針を踏襲した。しかし、臨床病理学的に独立した腎芽腫の亜型とされるものがあり、また腎芽腫の組織発生と関連するような腎芽腫前癌状態とされる病変も知られてきた。これらの病態も知っておく必要がある。実用的な座右の図譜であるようにとの配慮から、腎・尿路系腫瘍全体にわたって解説的な説明を行った。この図譜が日常の病理学的診断に役立ち、小児がんの克服に少しでも寄与することができれば、この分類作業に携わった病理学者の労は酬われるというものであろう。
昭和62年11月
日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会 委員長 浦野順文

第4篇 小児白血病(1981年発刊)

第5篇 中枢神経系腫瘍(1983年発刊)

新訂版第1篇 小児泌尿器腫瘍(1988年発刊)

新訂版第2篇 小児悪性リンパ腫および類縁疾患(1990年発刊)

小児腫瘍組織分類図譜3

新訂版第3篇 神経芽腫群腫瘍および類縁腫瘍(1992年発刊)
 小委員会 清水興一、堀江 弘、秦 順一、佐々木佳郎、浜崎豊、中島伸夫、臺丸 裕
新訂版第4篇 肝臓・胆嚢・膵臓腫瘍(1998年発刊)
 小委員会 三杉和章、小林庸次、今村正克、佐々木佳郎、中山雅弘、橋本公夫、恒吉正澄
 協力者 諸星利男、井上 健
新訂版第5篇 小児胚細胞群腫瘍(1999年発刊)
 小委員会 秦 順一(小委員長)、浜崎 豊、中島伸夫、宮内 潤、橋本公夫、臺丸 裕
新訂版第6篇 中枢神経系腫瘍(2001年発刊)
 主担当委員 伊東 宏
 協力者 原 正道、今井幸弘、岩城 徹、中里洋一、新宅雅幸、調 輝男、田口孝爾

新訂版第3篇序文より
 小児期に発生する悪性固形腫瘍の大部分は個体の発生および成熟段階の細胞に起源を求められる胎児性腫瘍である。従って、小児がんの腫瘍細胞は機能および形態の分化成熟の程度により複雑な特徴的な病態を示し、成人の腫瘍と異なる組織病理学的診断が重要となる。
 我が国では既に10余年にわたり「がんの子供を守る会」の支援の下に全国的小児がん登録が実施され、我が国の小児腫瘍の診断治療をはじめ衛生行政に大きな力となっている。日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会はこれらの小児腫瘍の全国登録のために共通の組織分類が必要であるとの観点から、その組織病理学的分類を規定し、昭和50年10月に小児肝癌、腎芽腫、神経芽腫群腫瘍の3腫瘍について腫瘍組織分類図譜を第1篇として刊行し、さらに4年後部分的小改訂を加えた。しかし最近の小児がんに関する知見の進歩は著しく、それに対応する分類ならびに図譜の見直しと取り扱う範囲の拡大が必要となってきた。そこで先ず腎芽腫を含め泌尿器腫瘍全体に範囲を広げた組織分類図譜を昭和62年11月に新訂版 第1篇 小児泌尿器腫瘍として刊行した。
 ついで神経芽腫群腫瘍についてはこの10数年間に登録症例の組織分類と予後の関連、マススクリーニングにより発見摘出された腫瘍などの多くの経験に加えて、各種の免疫化学的腫瘍マーカーの応用、腫瘍細胞の培養・移植法、遺伝学的研究法の進歩により、知見の著しい展開がみられた。これらの新たな知見を反映した分類の制定と、さらに神経堤に由来し多方向へ分化を示す類縁腫瘍の外科病理学的鑑別に記述も加えた分類図譜の計画が立てられ、当委員会の中に小委員会が組織された。浜崎豊小委員会副委員長をはじめ委員の努力、協力により試案が作製され、委員会における検討を経て、完成に至った。
 小児の固形腫瘍としては最も頻度の高い神経芽腫を中心として、それに類縁腫瘍を加えることにより、この新図譜が日常の病理組織学的診断に役立ち、ひいては小児がんから子供を救う診療に聊かでも寄与することができれば、この編集に努力を払われた委員各位の労が報いられるものであろう。
平成4年8月
日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会 委員長 清水興一

新訂版第3篇 神経芽腫群腫瘍および類縁腫瘍(1992年発刊)

新訂版第4篇 肝臓・胆嚢・膵臓腫瘍(1998年発刊)

新訂版第5篇 小児胚細胞群腫瘍(1999年発刊)

新訂版第6篇 中枢神経系腫瘍(2001年発刊)

小児腫瘍組織カラーアトラス

2002年より、小児腫瘍組織分類図譜は、小児腫瘍組織カラーアトラスとしてリニューアルされました。
Vol 1 悪性リンパ腫、白血病および関連病変(2002年発刊)
小委員長 藤本純一郎
協力者 菊池昌弘、中川温子、高山 順
Vol 2 神経芽腫群腫瘍-国際分類INPCによる-(2004年発刊)
小委員会 浜崎 豊(小委員長)、秦 順一、堀江 弘、田中祐吉
Vol 3 骨軟部腫瘍(2005年発刊)
小委員会 石田 剛(小委員長)、浜崎 豊、秦 順一、恒吉正澄
Vol 4 小児腎腫瘍(2008年発刊)
小委員会 秦 順一(小委員長)、堀江 弘、小林庸次、中山雅弘、田中祐吉、横山繁昭

カラーアトラス第1巻序文より
 小児腫瘍組織分類図譜は、1975年に初版第1巻「小児肝癌、腎芽腫、神経芽腫群腫瘍」が発刊されて以来、わが国の小児腫瘍の病理学的診断の統一を目的として、解説的な図譜として編集されてきた。本書は、同時に日本小児科学会、日本小児外科学会からの要請による全国の小児がん登録の診断基準統一のためにも広く利用されている。その間、本図譜の作成作業は(社)日本病理学会に設置されている小児腫瘍組織分類委員会で行われてきた。
 この度、小児腫瘍ではもっとも頻度の高い「悪性リンパ腫、白血病および関連病変」が上梓された。この巻から従来の小児腫瘍組織分類図譜という名称が「小児腫瘍組織カラーアトラス」に改訂され、その第1巻として位置づけられている。「小児腫瘍組織カラーアトラス」というシリーズに名称を変更した理由は、「組織分類図譜」という名称が些か古くさいのと、図譜がカラー化されて以来、外国でも評判になるほど写真の選択が適切で、かつ美しく仕上がっており、まさに「カラーアトラス」という名にふさわしいからである。新しいシリーズになっても病理医のみでなく、関連各科の先生方、研究者にも広くひもといて頂きたい。
 さて、新たに完成した「小児腫瘍組織カラーアトラス」第1巻「悪性リンパ腫、白血病および関連病変」は、その分類の基本を新たに策定されたWHO分類においている。さらに本書の特徴はWHO分類を基盤にしつつ小児期に頻度の高い疾患に的を絞って詳述している点にある。従来から血液系腫瘍の分類はその起源となる血液細胞の分化・成熟機序の免疫学的、分子遺伝学的研究の進歩に影響され、多くの分類が提唱されてきた。そのため、われわれ一般病理医にはややなじみにくく、どの分類を用いるのが妥当であるのか判断に困惑することが少なくなかった。本書は分類委員会において血液腫瘍の病理を専門としている先生方を加え、小児血液科の専門医からなる小委員会によって作成された。小委員会のメンバーが新しいWHO分類を詳細に吟味し、その分類の基本を崩さず小児に特有な血液腫瘍を強調し、それらを主体に取り上げた。さらに、親委員会の出来るだけわかりやすくという注文に応え、推敲を繰り返し完成した。この間の藤本純一郎小委員長をはじめ小委員会委員各位の努力を多としたい。最近漸く、小児腫瘍の領域でも多施設共同臨床試験の必要性が叫ばれている。この作業は正確な、再現性の高い病理診断が基盤となることは言うまでもない。この点、新たに策定された本分類が、血液腫瘍の日常の診療・研究のみならず、あらたに始まる臨床試験に大いに有用性を発揮することを期待したい。本書は、新たなWHO分類を基本としたわが国初めてのアトラスであり、成人の血液疾患を専門とする先生方にも広く利用して頂きたいと願うものである。
2002年 初秋
日本病理学会 小児腫瘍組織分類委員会 委員長 秦 順一

Vol 1 悪性リンパ腫、白血病および関連病変(2002年発刊)

Vol 2 神経芽腫群腫瘍-国際分類INPCによる-(2004年発刊)

Vol 3 骨軟部腫瘍(2005年発刊)

Vol 4 小児腎腫瘍(2008年発刊)

小児腫瘍組織カラーアトラス2

Vol 5 肝臓・胆嚢・膵臓腫瘍(2010年発刊)
 小委員会 堀江 弘(小委員長)、井上 健、中川温子、田中祐吉、横山繁昭
Vol 6 中枢神経系腫瘍(2013年発刊)
 小委員会 平戸純子(小委員長)、廣瀬隆則(特任)、北條 洋、井上 健、掛田伸吾(特任)、田中伸哉(特任)、田中祐吉
Vol 7 胚細胞腫瘍およびその他の臓器特異的希少腫瘍(2017年発刊)
 小委員会 井上 健(小委員長)、岩淵英人、大喜多肇、孝橋賢一、田中水緒、中澤温子、柳井広之
 協力者 小木曽嘉文、岸本宏志、木村幸子、高桑恵美、竹内 真、義岡孝子、吉田牧子

カラーアトラス第5巻序文より
 本邦における小児腫瘍組織分類図譜の刊行は、小児がんの全国登録の基準となる組織分類を作ることを目的に、日本小児科学会おより日本小児外科学会の要請を受けて日本病理学会の中に小児腫瘍組織分類委員会が設置されたことに始まり、1975年に小児肝癌、腎芽腫、神経芽腫群腫瘍の組織分類を内容とした第1篇が刊行された。その後、胚細胞腫瘍、脳腫瘍などの図譜が相次いで発刊され、わが国の小児がんの治療に貢献してきた。
 欧米を中心とした大規模な臨床共同研究の成果、免疫組織学的あるいは分子生物学的手法の進歩による近年の新しい知見を踏まえて、肝芽腫や膵腫瘍の新たな組織分類が作成されている。本邦においても1998年に小児肝臓・胆嚢・膵臓腫瘍の新訂版分類図譜が発刊された。この図譜では国際的な趨勢を配慮し、付記事項を設けて欧米分類との整合性が図られているが、基本的には旧組織分類を骨子としたものであった。一方、本邦の小児肝癌臨床研究グループであるJapanese Pediatric Liver Tumor Study Group (JPLT) では、欧米との国際的な臨床共同研究を模索するなど、臨床の場においても国際的に共通する組織分類への要求が高まっている。このような背景から本アトラスにおいてはWHOやAFIPなどの国際的な組織分類に準拠し策定した新組織分類を用いることとした。
 本カラーアトラス作成にあたっては、1982年から継続されている小児腫瘍症例検討会において検討された肝・胆・膵腫瘍症例より得られた知見が、肝芽腫、胎児性肉腫、膵腫瘍などの記述に生かされている。また、全国の小児医療施設よりJPLTに病理登録された200例を超える症例なども活用させていただき、掲載図の充実を図った。小児がんの組織診断に携わる病理医のみならず、その臨床に携わる先生方にも本アトラスがお役に立てれば幸いと考えている。
 最後にあたり本アトラスの作成にご協力をいただいた関係各位に謝意を表します。
平成22年6月
日本病理学会 小児腫瘍組織分類委員会 委員長 堀江 弘

Vol 5 肝臓・胆嚢・膵臓腫瘍(2010年発刊)

Vol 6 中枢神経系腫瘍(2013年発刊)

Vol 7 胚細胞腫瘍およびその他の臓器特異的希少腫瘍(2017年発刊)

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